AGAのオンライン診療の流れ|処方が受けられるとは限らない理由を指針で確認する
オンライン診療を申し込んでも、薬が処方されるとは限りません。厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和8年4月改訂)は、オンライン診療を行うかどうかを、実施のたびに医師が判断するものとしています。また、医師の判断によっては処方されない場合があります。厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」(第5版・令和7年3月作成)も、処方箋医薬品をどの患者でも受け取れるかのような期待を抱かせる広告を、誇大広告の例として挙げています。この記事では、本人確認や「診療計画」を含むオンライン診療の流れを、指針と事例解説書の原文に沿って整理します。なお、指針はAGAに限った決まりではなく、オンライン診療全般についてのものです。
初診は「かかりつけの医師」が原則
指針は、初診は「かかりつけの医師」が行うことを原則としています。ただし、医学的な情報が十分に把握でき、患者の症状とあわせて医師が可能と判断した場合にも、オンライン診療を行えるとしています。
それ以外の場合に初診からオンライン診療を行うときは、「診療前相談」を行います。指針の定義では、診療前相談は、映像を使ったリアルタイムのやりとりで医師が患者の症状や医学的な情報を確認するもので、診断や処方は含みません。適切な情報が把握でき、医師と患者の双方がオンラインでの診療が可能と判断して合意した場合に、オンライン診療を行えるとされています。
指針は、診療前相談の結果としてオンライン診療が行えない可能性があることや、診療前相談の費用などについて、医療機関のホームページなどで示すほか、あらかじめ患者に十分に知らせることが必要だとしています。
本人確認の方法
初診でオンライン診療を行う場合、患者の本人確認は、原則として顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)で行います。顔写真付きの証明書を持っていない場合は、2種類以上の身分証明書を使います。1種類しか使えない場合は、その証明書の特徴を十分に確かめたうえで、本人確認のための質問や全身の観察などを組み合わせるとされています。
医師の側も、原則として顔写真付きの身分証明書で氏名を示します。あわせて、「医籍登録年」を伝えるなどして、医師の資格を持っていることを患者が確認できる環境を整えておくことが求められています。
オンライン診療が向かない症状の見極め
指針は、安全にオンライン診療が行えることを確認しておく必要があるとしています。そのため、日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」などを踏まえて、医師が判断します。オンライン診療が適さない場合は、対面診療を行います(対面診療ができる医療機関を紹介する場合も含みます)。緊急性が高い症状の場合は、速やかに対面受診を促すことに留意するとされています。
対面診療につなげる仕組み
オンライン診療のあとに対面診療が必要になった場合について、指針は次のように書いています。かかりつけの医師がいる場合は、オンライン診療を行った医師がかかりつけの医師に紹介し、かかりつけの医師が対面診療を行うことが望ましいとしています。かかりつけの医師がいない場合などは、オンライン診療を行った医師が対面診療を行うことが望ましいとしつつ、患者の近くの対面診療ができる医療機関に紹介することも想定しています。
かかりつけの医師以外が初診からオンライン診療を行う場合の対応としても、指針は、医師が対面受診を要すると判断したときに、対面受診ができる医療機関へ医師から連絡し、診療情報を提供するなどして、患者を対面診療へ漏れなくつなぐことを挙げています。
「診療計画」に沿った進め方
指針は、オンライン診療を行う前に、医師が直接の対面診療で患者の心身の状態を十分に評価し、そのうえで「診療計画」を定めて2年間は保存することを求めています。診療計画には、オンライン診療で行う具体的な診療内容、オンライン診療と対面診療・検査の組み合わせ方、オンライン診療を行わないと判断する条件と、その場合に対面診療に切り替える旨などが含まれます。医師と患者のあいだのこうした決まりについては、患者の合意を得ておくべきだとされています。
初診からオンライン診療を行う場合は、診察のあとに、次回の診察の日時や方法、症状が悪くなったときの対面診療の受診先などの方針を患者に説明します。そのあとオンラインでの診療を続ける場合やその見込みがある場合は、できるだけ速やかに診療計画を定めて保存することになっています。
初診で処方されない薬がある
指針は、初診の場合には次の処方を行わないとしています。
- 麻薬と向精神薬の処方
- 基礎疾患などの情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬の処方
- 基礎疾患などの情報が把握できていない患者に対する、8日分以上の処方
また、初診からのオンライン診療や新たな病気に薬を処方する場合は、日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」など、関係学会が定める診療ガイドラインを参考にするよう求めています。
日本医学会連合の「オンライン診療の初診に関する提言」(2022年11月24日版)を確認すると、このリストは「抗菌薬」「糖尿病治療薬」のように、主に薬の種類ごとに書かれています。「フィナステリド」「デュタステリド」「ミノキシジル」という名前や、「AGA」「脱毛」という語は出てきません。提言は、このリストについて、一律に初診処方を不可とすることを目的とするものではなく、担当医が個々の患者の状態によって柔軟に対応する必要があるとしています。つまり、初診でどの薬を処方するかは、リストなどを参考にしながら医師が判断することになります。
「すぐに受け取れる」広告の問題点
事例解説書(第5版)は、オンラインクリニックの広告例として、「ご指定の薬局に処方箋をFAX」「いつでもお電話予約」「すぐに医薬品のお受け取りが可能!」といった文言を挙げています。そして、本来は医師の診察や処方箋の交付を経て処方される処方箋医薬品などを、どの患者でも受け取れるかのような「期待感」を抱かせている、と解説しています。
改善の考え方として、事例解説書は、医師の診察が必要である旨と、薬の受け取りの説明の近くに「医師の判断によりお薬を処方できない場合があります」などの文言を、最低限記載する必要があるとしています。さらに、指針で初診での処方が禁止されている医薬品や、「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」を処方する場合は、オンライン診療の初診では処方できない旨、またはオンライン診療では処方できない場合がある旨を明記することが望ましい、としています。
オンライン診療の案内を読むときは、医師の判断で処方されない場合があるという説明が書かれているかどうかも、確かめておきたい点です。
AGAに限った決まりではない
ここで紹介した指針と事例解説書は、AGAに限らずオンライン診療全般についてのものです。指針の本文には、「AGA」「フィナステリド」「デュタステリド」「ミノキシジル」といった語は出てきません。個々の医療機関がどのように診療を進めるかは、それぞれの医療機関の案内で確認する必要があります。
次に読む悩み
参考にした資料
- オンライン診療の適切な実施に関する指針(令和8年4月改訂) (厚生労働省・確認日: 2026-09-27)
- 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版・令和7年3月作成) (厚生労働省・確認日: 2026-09-27)
- オンライン診療の初診に関する提言(2022年11月24日版) (一般社団法人日本医学会連合・確認日: 2026-09-27)
最終確認日: 2026-09-27